戦車のメインとなる素材には、日本製鋼所が1924年に開発したニセコ鋼板が採用された。 89式中戦車が開発された当時、まだ溶接の技術がそこまで発達していなかったため、本体の装甲板はフレームにリベットで装甲されていた。ただし、この方法は当時どこの国においても防御という観点からは望ましいものだとは考えられていなかった。それは、リベットの頭に着弾すると周辺の部品が飛び散って戦車内部にいる人を傷つけることが多々あったからである。
実戦では、7.92mm砲を、距離およそ70~90m離れたところから被弾したことがあるという記録が残っている。この事例が示すことは、たとえあらゆる角度から被弾しても装甲が貫通してしまうことはなかったことを示しており、89式中戦車の防御力の高さを示している。しかし、一例だけ距離30mから85度の角度で被弾した際に貫通してしまったという事例も存在している。基本的には防御力が高いといえる戦車であるが、37mm砲を受けた際は、距離が300m以内であればあらゆる角度から被弾すると必ず貫通してしまうことが確認されている。